こんにちは、こがらし時計店店長の小林です。

今回紹介するのが、誰もが知っている腕時計の王様「ROLEX」製品の中で唯一のパイロットウォッチである「GMTマスターⅡ」のオマージュウォッチとなります。
GMTマスターⅡの歴史
カラーリングがユニークでカジュアルな見た目から「パイロットウォッチ?」と思う方もいるかもしれませんが、GMTマスターⅡの前進モデルであるGMTマスターは、航空会社の要望から作られた時計です。
その要望というのが「午前と午後を一目見てわかるようにしてほしい」
といった内容。
それまでのパイロットウォッチは、飛行戦でゆっくり時計を見ることもできないような過酷な状況を想定して、瞬時に時間がわかるように「画面の見やすさ」を優先して作られてきました。
その特徴は、文字盤がシンプルかつインデックス(文字盤上にある、時、分、秒などの時刻を示す目盛りのこと)が大きくはっきりとしていること。
シンプルなうえに、12時間で短針が一周する腕時計の構造上、長距離を飛行するパイロットが、今は午前なのか午後なのかを知る術がありませんでした。
そのようなパイロット達の苦悩からGMTマスターが生まれました。
午前と午後の違いが一目でわかるように赤と黒の2色でカラーリングされたベゼル。そしてGMT針と呼ばれる24時間で一周する針を設け、時間の把握を格段にしやすくしました。
それら機能を備えたことやパッと手元を華やかにしてくれるカラーリングから当時のパイロットから不動の人気を博すようになりました。
その時計の後継機がGMTマスターⅡとなります。
定価100万円を超えてしまうGMTマスターⅡ。
オマージュウォッチなら1万円台で購入できるけどその品質はどのようなものか、、
PARNIS社製PA2105。詳細に渡ってお伝えします。
PARNIS社 PA2105の実機解説
選ばれた「赤」と「黒」
本機を見てまず思ったことは、やはり赤黒の回転ベゼルが美しく、これがデザインを作り上げているということ。
ベゼルに使用している色は「赤」と「黒」の2色ですが、単なる赤と黒ではなく輝度によって明暗の差ができるよう非常に細やかな配慮がされていることがわかります。
陽の光や室内の照明にあたっている時は手元がぱっと華やぐチェリーのような色合いに。暗がりでは悪目立ちしないように黒味の強いボルドーワインのような大人びた色合いへと変貌します。
写真はあえて12~14のメモリは影になるように撮影しました。この写真だけで色合いの奥深さを感じていただけるかと思います。
爽やかにも大人びても見える明暗の差こそが「赤黒」という大胆な色使いに踏み切れた所以なのではないでしょうか。
ベゼルのメモリは彫り込み式。ここはPARNISのこだわりを感じられるポイントです。
ヨットマスターのように立体的な加工を施すこともできますが、嫌なひっかかりができてしまう。それならとフラットなベゼルに塗料でメモリを施すなら安っぽく見えてしまう。
彫り込み式でしか出せないような、マットな質感と艶やかに煌めく赤黒のカラーリングとの差が本機の大きな魅力です。
ただ、贅沢を言ってしまうのであればオマージュ元であるGMTマスターⅡのように断面までしっかり見えるような彫り込みをした方がより高級感があったのではなかろうかという気持ちが頭をよぎってしまいます。
操作のし易い凹凸ベゼル
続いて側面を見てみましょう。ステンレススチールの側面の加工は横方向のサテン仕上げが非常に細かく、さらに等間隔で縦方向の凹みが設けられています。
これはパイロットウォッチとしての機能的な部分で、搭乗中に装着している厚手の手袋でも簡単にベゼルの回転操作を行えるように考えて作られている部分です。
このような凹凸があるとやはりベゼル操作がしやすく、ただの曲線だけでは表せられない男性っぽさを感じられる部分となっています。
もちろん、ベゼルは回転可能。1周で24時間分のメモリとなっており、写真では6時間分回転させています。半時計回りのみにしか回転しない逆回転防止ベゼルのため不本意な誤操作を招きにくい仕様となっています。
計算され尽くしたフロント
文字盤は標準的なブラックダイヤルです。腕時計の文字盤としてはまず間違いのないカラーリングでしょう。
5分おきに配置されているインデックスは文字盤と正反対の白を使用。立体的な形状が視認性を広げ、縁にあるポリッシュ仕上げのステンレススチールが光沢を纏っています。この光沢は時針や分針、秒針、そしてGMT全てに備わっているため、ケース全体の統一感が図られています。
「もし白地じゃなかったら。」「シルバーの縁がなかったら」魅力は半減していたでしょう。
特にシルバーの縁についてはメーカーの写真ではよくわからなかった細かい部分で、手にした時に安堵したことを覚えています。
GMT針も非常に鮮やか。GMTマスターⅡに比べてやや先端の尖った形の三角形となりますが、インデックスの邪魔をしていないためこれもありです。
この針もベゼル同様暗所ですと落ち着いた色合いに見え、GMT針がケース全体を上手に纏めているのだと思っています。
サテン仕上げの3連ブレスレット
続いてブレスレット。3連ブレスレットなのでギラつきもなく程よいカジュアル感を演出しているように感じます。メーカーは5連ブレスレットバージョンも販売していますが、私としては派手で“着ける場”を選ぶかと思い、当店ではあえて3連ブレスレットの販売をしています。
素材はステンレススチールでできており丁寧なサテン仕上げ。他の時計だとヨットマスターのようにブレスレットの真ん中列のみポリッシュ仕上げを施すパターンもありますが、本機に関して言えば“パイロットウォッチ”という歴史から、派手な“ラグジュアリー感”は決して必要ないと私は考えています。
そのため、仕事にも私服にも趣味にも相応しいとなると、5連でもポリッシュでもなくサテン仕上げの3連ブレスレット一択かな、と。
ちなみにブレスレットの側面は、ケースの側面同様艶のあるポリッシュ仕上げとなっています。
ROLEXの真骨頂“オイスターケース“
裏蓋はスクリューバック式のオイスターケース。28歳の私がまだお子ちゃまなのか、“ムーブメントが見えない“点に寂しさを感じてしまいます。
もともとオイスターケースは防水力を堅持するために存在しているのですが、それはあくまで「防水」のため。潜ったり泳いだり、はたまた雨に濡れたりと、水にさらすような使い方をしない私はオイスターケースではなくムーブメントが見えるシースルーバックを好んでしまいます。
ムーブメントは「Mingzhu社製3804」。中国では一般的なムーブメントになります。本家GMTマスターⅡのように職人が1つひとつ作り上げるということはなく、工場で大量生産されているムーブメントです。
とはいえ昔と違い世界屈指の高い技術力を誇っている中国。使用から1年程経過していますが、日差や精度など問題なく使えています。
40mmの安定感
実際に着用した状態です。私は手首が細いので(腕周り15.5cm)上下3個ずつコマを外して調整をしています。
本機は40mmのステンレススチール製で、そのサイズから想像されるより大きくもなく小さくもなく、サイズどおり装着することができます。
世の中の時計は雑誌で見た時やディスプレイに並んでいる時、あるいは手に持っている時、その佇まいは素晴らしいものです。しかし手首に着けた瞬間、その幻想が一気に崩れてしまうことが往々にしてあります。手首が細い私は何度涙を飲んできたことか、、(泣)
そんな私でもやはり40mmは安心して着けられる時計だということを改めて認識しました。

スペック
機械式自動巻時計
ムーブメント: Mingzhu 3804
防水機能 5気圧防水
時針、分針、秒針、GMT針
蓄光
カレンダー( サイクロップレンズ )
ハック機能
逆回転防止ベゼル
第2時間帯把握機能
サイズ ケース直径 : 40mm
ベルト取付幅 : 20mm
重量 : 150g
カラー 本体 : シルバー(銀)
ベゼル : レッド&ブラック(赤&黒)
文字盤 : ブラック(黒)
ベルト : シルバー(銀)
素材 本体 : ステンレススチール
風防 : サファイアクリスタルガラス